1章

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「伊藤君だけかと思ってた」  安心でポツリとこぼれた言葉は鈴木に聞こえたようで、鈴木は首を傾げる。 「え? 今でも連絡とってるのは翔真だけだけど」 「え? 」  さぁっと自分の心臓から血が引いていく音がする。 「翔真だけだよ。連絡とってるの……っていうか今でも一緒に遊んでいるやつは」 「え? え? ちょ、ちょっと待って」  片手で眉間を揉む。 「待つけど……何をそんなに慌ててんの?」  必死に鈴木の周りにいたクラスメイトを思い出す。  かろうじて、ぼんやりと顔は出てきたが、名前が全然出てこない。  ここに来て、クラスメイトとの交流をサボっていた仇がきた。でも、私は満足だったのだ。それで。  仲いい友達数人と居られれば。小学校の頃からそうだったし。  でも鈴木は私とは違う。鈴木はもっといろんな人と仲良くしなきゃ。  ぐるぐると巡る思考の中、徐々に中学時代の記憶が鮮明になっていく。 「あ、うん。えっとー眼鏡かけてチャラチャラした人は? 」 「チャラチャラ? 田中か? 」  そうだ、そんな名前だった!  勢いよく首を振る。  鈴木は宙を見て懐かしそうに笑う。 「あいつ今なにしてるんだろうなぁ」  あ、本当に連絡とってないんだ。  鈴木のそのセリフで思い知らされる。 「な、なら、同窓会行ってみたら? 会えるかもよ? 」
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