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「ほら、着いたよ」
応天門を指さし鈴木を見上げる。
目線が自分から離れてほっとした。
「おぉ⋯⋯俺は今のところ見た中だとここが一番好きかも」
「南禅寺と比べて? 」
「うん」
「まぁ、南禅寺は荘厳って感じで、ここは朱色に塗られてる分派手だよね。あまり、うまく表現できないけど⋯⋯」
「何かこう目にパッと入ってくる感じだよな」
「うんうん。そういえば、弘法も筆の誤りってあるでしょ」
「あぁ、ことわざでな」
「あれって平安京にあった応天門の額を弘法大師が書いた時に、点を一個付け忘れちゃったんだって。それが由来らしいよ」
応天門の下に立ち、真上を見上げて真ん中あたりにある額を指す。
「あれだよ。これは平安京の応天門を再現したものだから当時の物じゃないけど」
「あれ? 」
鈴木が指さす。
「そう、そこあたり」
「応天門って想像してた漢字と違うな⋯⋯。慶應のおうなんだな」
「うん。ちょっと難しい漢字だよね。⋯⋯首痛くなってきた」
「そりゃあ、そんなに真上見てたらな。中はいるか」
「うん」
白砂利が敷き詰められ、奥には太極殿がある。⋯⋯平安時代にタイムスリップしたようだ。
「⋯⋯大河ドラマに出てきそうだな。あそこで美人が舞い踊ってたりしてそう」
「たしかに。平安時代にあった朝堂院を八分の五のサイズで再現してるらしいよ」
「へぇ、だからか」
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