1章

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 テンション下がった鈴木からやる気のないツッコミが来る。 「言葉の綾だよ」 「そういう斎藤はどうだったんだよ」 「私? 私は」  おみくじを開く。 「あ、大吉だ」  願い事の欄を見る。叶うと書いてあった。 「⋯⋯大吉の割にはうれしそうじゃないな」 「え? そんなことないよー」  手をひらひら振りつつ、鞄から財布を出す。 「大吉だし、財布の中に入れておこうかな。鈴木は? 」 「俺は結ぶ」 「うん、じゃあ結びに行こうか」  おみくじを結ぶところはすでに白い紙で埋まっていた。それだけ参拝客が多いということだろう。  高い場所は比較的まだすいている。鈴木は楽々とその場所に手を伸ばした。 「⋯⋯左手で結ぶといいらしいよ」 「本当か? 」 「本当」  といっても、漫画からの知識なのであやふやだ。  鈴木は右利き。左で結ぶとなると相当苦労するだろう。  そう見込んで見上げていると、そつなく鈴木は左手で結んだ。 「⋯⋯器用だね。鈴木右利きじゃなかったけ? 」 「いや、基本右だけど両手使えるんだ」 「⋯⋯スイッチハンド? 」 「そういうことになるな」 「なんで、右利き使えるの? 」 「小学生の頃って無茶な遊びするだろ。で、骨折する」 「あぁ」  確かにクラスの男子がよく松葉づえをついていた。 「それで、右手骨折したことがあってその時にな」
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