24人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
2章
今は日本史の授業中。ちょうど平安時代をやっている。
先日平安神宮に行ったからか、いつもより想像しやすい。先生の話が聞こえるたびに、頭に映像が流れていく。
それなのに、授業に身が入らないでいた。
なんで授業に身が入らないのか。その理由は十分にわかっている。
理系に進めば、こんなに詳しく習わなくていい。そう思うと、今やっていることが無駄な気がしてくるからだ。
日本史の教科書から目を外し、窓の外を見る。
外では、どこかのクラスがサッカーをやっていた。
今日、自分も体育の授業が入っていたのを思い出し、余計に気が重くなる。
サッカーボールが宙を舞い、ネットに入る。音が聞こえなくても、盛り上がっているのが目に見えて分かった。
……誰が入れたのだろう。疑問に思って、人の中心を見ると、そこには鈴木が立っていた。
慌てて視界から消すように目線を外すと、鈴木から少し離れたところに立っている伊藤君と目が合った。
間違いなくあっちも自分のことを認識しているだろう。
あの人の視力は両目ともに1.0以上あったはずだ。
……気まずい。
そっと黒板に視線を戻し、気づかなかった振りをした。
大丈夫。向こうは私のことを嫌っているはずだ。
気づいていたとしても、視線を外した私を咎めることはないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!