2章

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 鈴木を見てしまったこと。伊藤君と目が合ってしまったこと。それを忘れるために、授業に集中した。  ◆  授業が終わると同時に昼休みのチャイムが鳴り響く。窓の外を見ると、校庭にはもう誰もいない。  礼をすませたあと、立ったまま自分の鞄から財布を取り出す。  今日はお弁当を持ってきていない。よって、買ってこなくてはならないのだ。 「桜! 」  振り返ると、お弁当を持った友人が数人。 「購買? 」 「うん、先に食べといてくれる? 」 「オッケー」  了承をもらい、教室の外を出る。  教室の外は色々な人が行き交っていて、騒がしい。  ほとんどの人が同じ方向へ歩いていく。購買の方向だ。これはもしかしたら、購買はもう混んでいるかもしれない。  私の学校の購買は、テレビや漫画の世界のように購買前に人混みがあり、それをかき分けておばちゃんからパンを買うといった弱肉強食の世界ではない。  皆きっちり並び、購入する。  ただ、その分長蛇の列があるとそれだけご飯を食べるのが遅くなってしまうのだ。  ⋯⋯急がないと。あまり、ご飯を食べるのが早い方ではないし。  速足で歩く。 「斎藤! 」  振り向くと、鈴木がいた。 「あぁ」  手を振り、また歩き出す。  薄情に思われるかもしれないが、これが私のたたき出した最善の方法なのだ。
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