2章

4/33

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
 ちらりと様子をうかがうと、ここまでだと予想していなかったのか鈴木はわずかに驚いていた。 「⋯⋯あぁ」  気を取り直したように頷く。  最初から、購買で買う予定じゃなかっただろうに。  ため息をつきそうになり、慌ててこらえた。 「そう」  列に並ぶ。鈴木が私の横に立つ。 「何買うの? 」 「⋯⋯何か、おすすめあるか? 」 「おすすめ? そうだな⋯⋯サンドイッチとか? 」 「サンドイッチか」 「コロッケとタマゴのサンドイッチ」 「じゃあ、それと⋯⋯あとは適当に頼むか」  無言の空間が続く。周囲は騒がしいのに私たちだけ無音だ。  居心地の悪さを感じる。  身じろぎすると、鈴木が話し始めた。 「斎藤、考古学興味あるって言ってたよな」 「考古学っていうよりは古代生物学? 」 「あぁ、そうだった。いわゆる恐竜とかマンモスとかそのあたりだよな」 「うん」 「この前、先生と話してたらさ、たまたまその分野に知り合いがいる先生がいて」 「へぇ、そうなんだ」 「会ってみるか? 」  会いたいか会いたくないかで言えば⋯⋯あれ? どっちなのだろう。  簡単に白黒着くと思っていた答えは、白黒ではなくグレーの状態で私の中で固まった。 「迷ってる? 」 「迷ってなんか」  ない。そう言おうとした声は空気に触れる前に私の口の中で消えた。 「迷ってるのか」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加