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なら、私はその思いに真摯に答えなければならない。
また、間違えないためにも。
「大丈夫。少し嫌な夢見たから、気分がおかしくなっただけ」
「そうなのか? 」
「うん。心配してくれて、ありがとう」
目を細め、口角をいつもよりも上げる。
「何も無いならいい」
私から、視線を前に移す鈴木の足を気づかれない程度にちらりと見た。
……普通の足だ。あの時みたいに変に曲がっていたりなんかしない。
そのことにほっとしながら、いつも通りになるために会話の内容を探す。⋯⋯なにがあっただろうか。
「鈴木、そういえばあの人とは同じクラスになったの? 」
「あの人? あぁ、翔真のことか? 」
「⋯⋯うん」
鈴木が事故に会ったとき、私と同じようにその現場にいた人物。鈴木の親友だ。
私はあの人がどうしても苦手で、二人きりになることを避けている。きっと、向こうも気づいているだろう。
⋯⋯初恋の人に対して、こんな感情を抱くなんて思いもしなかったな。
窓の外を見ると、桜並木が窓から見えた。
⋯⋯あの事故以来、桜はどうも苦手だ。そこから顔をそらし、鈴木のほうを見ると、鈴木は嬉しそうに笑っていた。
「その顔は⋯⋯伊藤君と同じクラスになれたの? 」
「あぁ! これで、二年連続同じクラスだ」
「そう、それはよかったね」
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