2章

6/33

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
 その甘ったるい味がなぜかのどにまとわりついたような気がした。  ◆  高二職員室前。私はそこに立っていた。  職員室になんて日直の時、日誌を返しにいくぐらいしか入ったことがない。 「失礼します。山中先生いらっしゃいますか? 」  職員室の扉を開け、大きい声でそういうとのそりと山中先生がやってきた。 「斎藤さん、久しぶりだね。どうしたんだい? 」  私の顔を見て、すぐに名前を出す先生に驚く。名前を覚えてるのか。 「⋯⋯お久しぶりです。あの、先生は理転ってどう思いますか? 」 「りてん? 理系になるってことかい? 斎藤さんは確か文系だったよね? 」 「はい」 「なるほど、迷っていると? 」 「たぶん⋯⋯そうなんだと思います」 「そうか。ちょっと場所を移そうか。少し待ってて」  職員室の扉付近で待つ。  生徒や先生が出入りしていて少し居心地が悪い。 「待たせたね」  先生の手には鍵が一本。 「行こうか。この場所だと、少し人通りがあるから」  先生の後をついていく。 「このまえ、鈴木君が言っていたことはもしかして斎藤さんのことかい? 」 「おそらくそうだと思います」 「そうか」  ほほえましいものを見たかのような顔で見られ、思わず視線を外す。  先生はてきぱきと鍵を開けると、扉を開け中の電気をつけた。 「どうぞ」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加