2章

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「小さい頃から恐竜が好きなんです」 「ほぅ。それは初耳だね」 「だと思います。あまり人に言わないので」 「それは……また、なんで? 」 「恐竜って、男の子が好きなものっていうイメージがあるじゃないですか。だから、言いにくくて」 「なるほどねー。海外には、女性の研究者もたくさんいるよ? 」 「そうなんですか? 」 「うん」 「それは、初めて知りました」  山中先生は穏やかな笑みを崩さず、机の上に手をおく。 「それで? 斎藤さんは古生物学にかかわる仕事がしたいのかな? 」 「はい。したいと思ってました」 「⋯⋯ということは、今はしたくないということ? 」 「いえ、そういうわけじゃ」  山中先生の視線を感じる。数秒口をもごもごさせて、口を開いた。 「分からないんです」 「古生物学にかかわる仕事がしたいっていう気持ちはあるのかな? 」 「⋯⋯怖いんです」 「怖い? 」  頷く。 「私、数学苦手で⋯⋯化学も苦手で特に物理なんてまともな点数取れたことありません」  山中先生をちらりと見ると、穏やかな笑みで会話を促される。 「行ってもなれるのか、後、私理系の分野では古生物学以外興味ないんです。もし、なれなかったら逃げ道がもう……」 「そっか。悩んでいることはそこだけ? 」 「はい」
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