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「小さい頃から恐竜が好きなんです」
「ほぅ。それは初耳だね」
「だと思います。あまり人に言わないので」
「それは……また、なんで? 」
「恐竜って、男の子が好きなものっていうイメージがあるじゃないですか。だから、言いにくくて」
「なるほどねー。海外には、女性の研究者もたくさんいるよ? 」
「そうなんですか? 」
「うん」
「それは、初めて知りました」
山中先生は穏やかな笑みを崩さず、机の上に手をおく。
「それで? 斎藤さんは古生物学にかかわる仕事がしたいのかな? 」
「はい。したいと思ってました」
「⋯⋯ということは、今はしたくないということ? 」
「いえ、そういうわけじゃ」
山中先生の視線を感じる。数秒口をもごもごさせて、口を開いた。
「分からないんです」
「古生物学にかかわる仕事がしたいっていう気持ちはあるのかな? 」
「⋯⋯怖いんです」
「怖い? 」
頷く。
「私、数学苦手で⋯⋯化学も苦手で特に物理なんてまともな点数取れたことありません」
山中先生をちらりと見ると、穏やかな笑みで会話を促される。
「行ってもなれるのか、後、私理系の分野では古生物学以外興味ないんです。もし、なれなかったら逃げ道がもう……」
「そっか。悩んでいることはそこだけ? 」
「はい」
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