2章

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 私はクラスが違うから知らないが、クラスではもっと桜に酷いことをしているのだろう。その悪ガキがいくら痛い目を見ようと、少しも気にならない。  無視して歩き始めようとしたが、その瞬間、桜が振り返り、肩ほどの茶色がかった柔らかい髪が私の方に当たった。  その後、間を置かずひゅっと息を吸い込む音がする。  私はその声を聞いて焦った。今でこそ、そこまでではないことを知っているが、元々桜は喘息持ちで、体が弱いのだ。  そして、親同士の仲が良く生まれた時から一緒にいる私は喘息の兆候を知っていた。他の喘息持ちの人の喘息がどうやって始まるのかなんて知らない。  でも、桜のだけは知っていたのだ。  焦って、桜の方を見ると桜は喉元に手をあて、ヒューヒューと息をならしていた。  白い頬にはぎゅっとつぶった目からでる涙が伝っている。いつものまん丸で優しそうに細められる目が嘘のようだ。  焦って取り乱しそうになったが、一呼吸して自分のポニーテールをきつく縛り直すように髪をぐっと引っ張る。  ここで、自分が取り乱してはいけない。  落ち着いて、桜が喘息に陥った時にやっている方法を思い出す。  桜のランドセルを開けて、酸素ボンベのような缶を取り出し、口を覆うプラスチックがついた管のようなものをセットする。
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