2章

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 それを桜の口に当て、薬をだした。気体状になった薬を少しずつ桜が吸い込むかのような動きをしているのをみて、一息つく。  落ち着いた状態で桜を見ると、どんどん疑問が浮かんできた。  なんで、桜は自分で吸入器を出さなかったのだろう。  喘息の時、桜は涙が浮かぶ目を僅かに開け、ランドセルを必死に開けていた。  とは言っても、手が震えていてランドセルを開けられることは少なかったから、私がほとんど開けていたのだが。  でも、私の仕事はそこまでだ。  その後、桜は自分ですべての工程をやる。  何度も私がやろうか? といっても桜は首を振るだけだった。  迷惑をかける訳にはいかないと言いながら。  迷惑じゃないと言っても聞いてくれなかった。これは私が桜に対して持っている不満のひとつだ。  桜は決めたことに関しては、曲げることはなく、何を言っても聞かない。  そんな桜が……なんで今日私が吸入器を使うことを許した?  その答えはすぐにわかった。  桜が吸入器の薬を吸い込みながら、苦しそうな目をしながらただ一点を見ていたからだ。  視線の先を追って、桜の口にあてている吸入器を落としそうになった。 「なにあれ⋯⋯」  まるで、地獄絵図だ。  桜の体がゆらりと揺れる。  慌てて、支えると吸入器がカランという音を立てて、黒いコンクリートの地面に落ちた。 「桜! 桜! 」
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