2章

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 小学校の時よりは人づきあいがうまくなった。そこそこに人に好印象を抱かせることだってできるし、自分をよく見せる笑顔の作り方だって知っている。  でも、私は元来人と付き合うのは好きではないのだ。  ということで一時的な避難として、私は閉ざされた屋上の前にある階段で一人ぼそぼそとご飯を食べていた。  もぐもぐお弁当を食べながら、ぼーっとしているとコツコツと足音が聞こえる。  誰か来るようだ。ここから先に教室はないため一番人が来ない場所だと見込んでここに来たのに。  食べている姿を見られるのは嫌だなと思い、少し顔を伏せた。  階段の目の前で足音がコツッと止まる。  そしてそのまま足音はこっちに近づいてきた。  私の視界に上靴と学生服の裾が映る。 「⋯⋯斎藤さん」  おそる顔を上げると、そこには首に少しかかるほどの整えられた黒髪、筋の通った鼻立ちに切れ長の目の男子がたっていた。  こうやって、実際に正面から顔を見たのはいつぶりだろう。 「⋯⋯伊藤君」 「久しぶりだね」  そう言いながら、伊藤君は私の隣に腰を下ろした。  ⋯⋯何の用事できたのだろう?  自分の心をごまかそうとしたが、そういうのでごまかせないほど伊藤君がここに来た用事はもう分かり切っていた。 「そうだね」 「小学校は言ってから、斎藤さんとは全く話さないようになったよね」
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