2章

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「うん、なんかね⋯⋯」  言葉を濁す。  久しぶりに会った者同士。  遠目から姿は見ていたけど、小学校以来伊藤君とは全く話していない。それこそ、一言たりとも。  そんな関係で、話が進むはずもなくしばらく無言状態が続く。  腕時計をちらりと見る。後、昼休み終了まで10分。  ⋯⋯逃げきれるだろうか。 「斎藤さんってさ」 「な、なに? 」  声が裏返り、しまったと思った。手のひらで口を押えていると、伊藤君がにっこりと笑う。 「俺が斎藤さん嫌いなこと知ってるよね」  一瞬何を言われたのかわからなかった。  なにをすることも言い返すこともできず、ただただ伊藤君を見るしかない私を見て、伊藤君は笑う。 「ごめんね。急にこんなこと言って。でも、今日は俺なりに覚悟を決めてきたんだ」 「⋯⋯覚悟? 」 「そう。覚悟。ねぇ、俺たちはあまりに有耶無耶にしすぎてきたと思わない? 」 「有耶無耶⋯⋯」 「斎藤さん、俺が斎藤さんのこと嫌っていること知ってるよね? 」  頷くことしかできない。 「それで、何故嫌っているかもうすうす気づいてる」  じっと伊藤君の目を見ると、伊藤君は目を弓なりに曲げる。 「ね? やっぱり予想ついてる」  伊藤君の目が私からそらされた。 「斎藤さん、食べながらでいいよ。昼休み終わるし」 「あ、ご飯忘れてた」
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