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「うん、なんかね⋯⋯」
言葉を濁す。
久しぶりに会った者同士。
遠目から姿は見ていたけど、小学校以来伊藤君とは全く話していない。それこそ、一言たりとも。
そんな関係で、話が進むはずもなくしばらく無言状態が続く。
腕時計をちらりと見る。後、昼休み終了まで10分。
⋯⋯逃げきれるだろうか。
「斎藤さんってさ」
「な、なに? 」
声が裏返り、しまったと思った。手のひらで口を押えていると、伊藤君がにっこりと笑う。
「俺が斎藤さん嫌いなこと知ってるよね」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
なにをすることも言い返すこともできず、ただただ伊藤君を見るしかない私を見て、伊藤君は笑う。
「ごめんね。急にこんなこと言って。でも、今日は俺なりに覚悟を決めてきたんだ」
「⋯⋯覚悟? 」
「そう。覚悟。ねぇ、俺たちはあまりに有耶無耶にしすぎてきたと思わない? 」
「有耶無耶⋯⋯」
「斎藤さん、俺が斎藤さんのこと嫌っていること知ってるよね? 」
頷くことしかできない。
「それで、何故嫌っているかもうすうす気づいてる」
じっと伊藤君の目を見ると、伊藤君は目を弓なりに曲げる。
「ね? やっぱり予想ついてる」
伊藤君の目が私からそらされた。
「斎藤さん、食べながらでいいよ。昼休み終わるし」
「あ、ご飯忘れてた」
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