2章

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 もぐもぐと再び口を動かすと、視線を感じた。 「斎藤さんって小動物みたいだよね」 「小動物? 」 「うん、食べてる姿とか雰囲気が。後、臆病なところも。⋯⋯まぁ、臆病なのは俺もだけど」 「臆病⋯⋯。それは、否定できないかも」 「⋯⋯いつ空いてる? 」 「いつって? 」 「空いてる日」 「⋯⋯どこか行くの? 」 「うん。斎藤さんと」 「私? なんで? 私のこと嫌ってるんだよね? 」  頭から出た疑問が次々と口から出てくる。 「まぁ、落ち着いて。で、空いてる日は? 今週の日曜とか空いてる? 」 「空いてるけど⋯⋯」 「なら、その日に。十字路に一時」 「⋯⋯十字路って」  鈴木が事故にあった場所じゃないか。  私たちの中で十字路といったら一つしかない。  なんで、わざわざその場所を⋯⋯。 「なんでその場所をって思ってる? 」 「うん」 「定番の待ち合わせ場所でしょ? 俺らにとっては」 「そうだけど⋯⋯定番の場所なら他にもある」 「⋯⋯あの場所から逃げたらだめだと思うんだ。俺も、斎藤さんも。もちろん亮太もね」 「⋯⋯私は」 「ねぇ、斎藤さん。決着つけよう。これでもう幕引きにしよう。⋯⋯綺麗にとはいかないかもしれないけど」 「なんで、急に⋯⋯」 「急じゃないよ。前々から考えていたことなんだ。幕引きも」  伊藤君はため息を吐く。
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