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「しなきゃいけない。それをせずには誰も幸せになれない。そう思っていたし、そのことは今でも思ってる。でも、昔と今ではとらえ方が⋯⋯その先の未来は少し違うんじゃないかと思ってきた」
「⋯⋯どういうこと? 」
「どういうことだろうね? 自分もよくわからない」
「自分もよくわからないの? 」
「うん」
伊藤君の発言が一体どういう意味なのか、考えていると、予鈴が鳴った。
「もうすぐ、昼休みが終わるね」
「そうだね。教室に帰らなきゃ」
お弁当をもって、立ち上がる。伊藤君はいまだに座ったままだ。
「伊藤君は行かないの? 」
「行くよ。行くけど、斎藤さん先に帰ってくれる? ⋯⋯一緒に帰ると亮太がうるさそうだ」
「あぁ⋯⋯。わかった」
「あと、くれぐれも日曜の件、誰にも言わないでね」
「⋯⋯分かってる。これは二人だけの話し合いだよね」
「うん。凛にも亮太にも言わないで」
私がうなづくと、伊藤君はいつもの笑みに戻った。
「じゃあ、斎藤さん日曜に」
ひらひらと手を振る伊藤君に振り返す。
この階段を抜けたらいつもの日常に戻る。
伊藤君と私は一度も話したことがない同じ空間にいるだけの他人だ。
小学校、私たちの中で何があったかなんて知る人は鈴木しかいない。その鈴木でさえ、私たちがどう変わったかなんて知らないだろう。
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