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教室へ戻り、日常に戻った空間にほっとした。
私には相変わらず視線が浴びせられているが、それも先ほどの空気に比べれば軽いものに感じる。
授業が始まり、黒板を見たとき伊藤君の後頭部が目に入った。
⋯⋯いつの間に帰ってきたのだろう。
ほら、気が付かないほど自分と彼は他人だ。
そう頭の中で繰り返すが、やっぱり先ほどまで話していたという事実は簡単に自分の頭から消せるものではないようで、いつもよりも長く見てしまった。
それがいけなかったらしい。
先生のほうに目を移したとき、こっちをじっと見る鈴木と目があった。
⋯⋯まずい。
違和感が生じないよう、数秒見てから視線を外した。
「斎藤、問い2黒板に解いてくれ」
「はい」
ノート片手に黒板に計算式を移していく。
その最中にも鈴木の視線を背中に感じて、なんだか居心地が悪い。
「ん、正解だな」
苦手な数学が正解したことにほっとしながら、席へ戻る。
猛勉強したかいがあった。
授業終わりのチャイムが鳴り、私はトイレへ行くふりをして席を立った。
外を出て、割かし人通りが少なくなる渡り廊下で足を止めると、肩をたたかれた。
「ヒッ!? 」
さっと後ろを振り向くとそこには不満げな顔をした鈴木がたっている。
「ヒッって傷つくな⋯⋯」
鈴木が壁にもたれかかり、ぼーっと目の前の風景を見る。
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