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「⋯⋯鈴木は何の用? こんなところに」
「斎藤と話をしに来た」
「私と? 」
「翔真と何があった? 」
「⋯⋯なんで確定事項として話すの? 」
「勘」
「勘って⋯⋯」
「で? 何があった? 」
「何もないよ」
「⋯⋯お前らって昔から俺にいろいろ隠すよな」
「それは⋯⋯ないと思うけど」
色々と鈴木に対して、二人で結託して隠した覚えなんてない。
結託するほど仲が良くもないし。
「そうだと思うけどな。で、何があったかはやっぱり俺には話してくれないわけか」
「⋯⋯だから、そもそも何もないって」
「そっか。やっぱり話してくれないんだな。まぁ、当たり前か」
「だから⋯⋯! 」
否定しようとしたところで、わざとらしく鈴木が声を上げた。
「もうそろそろ教室に帰らないと間に合わない」
「え? 」
鈴木に手を引かれて、走り出す。
授業前だからか廊下に人は少なく、幸いにも私たちが手をつないでいることに注目する人はいなかった。
でも、ここは学校。ありもしないことでさえ、噂になってしまうようなところなのだ。
「鈴木! 手! 離して! 」
「斎藤、走るの遅いだろ」
鈴木は手を離してくれない。
必死で足を動かしながら、ついていく。
体温は感じるのに、なぜだか距離が遠い気がする。
いつもよりせわしなく移り変わる風景の中で、山中先生が見えた。
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