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たとえ自分をいじめている相手の友人であろうと、いじめられた後、慰めの声などをかけられてしまったら精神的に追い詰められていた私が恋に落ちてしまうのは自明の理だった。
優しい人だ。でもって、初恋の人。自分が今、恋をしている人。
そう思ってしまったら、その人が来た時、顔が緩みもするだろう。
「なのに、斎藤と翔真⋯⋯今はあまり話してないよな」
「中学、高校と変わったら、関係性も変わるよ。⋯⋯私と鈴木の関係も変わったでしょ? ただのクラスメイトから友人に」
「そうだな」
鈴木の顔は晴れない。
⋯⋯自分が今、このセリフを吐いても気休めにしかならないだろう。きっと、心の底からは信じない。でも、言わないといけない。
「⋯⋯鈴木のせいじゃないよ。だから、伊藤君と私の関係を鈴木が気にする必要はない」
「⋯⋯そうか」
どこか諦めたような笑みをフッと鈴木は浮かべた。
間違えただろうか? でも、鈴木のせいじゃないというのは本当だ。
関係が変わったのは、私のせい。まあ、もとより壊れるほどの関係もなかったけど。
自嘲的な笑みが浮かびそうになる。ちょうどその時、高校の最寄り駅についたことを知らせるアナウンスが響いた。
「鈴木、一限何? 」
立った瞬間、電車の揺れで少し揺らめくと、鈴木に腕を掴まれた。ありがとうと小声でつぶやくと、鈴木は頷く。
「数B」
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