3章

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 表面上の愛想がいいというか、猫かぶりが上手いというか⋯⋯。  こういうところは、私が伊藤君に嫌われて、伊藤君のことを私が苦手な理由の一つだろう。  でも、今の状況には合っていると思った。  こういう風に笑いあっていれば、話している内容が何であれ、険悪な仲だとは思われないだろう。  周りにはなるべく迷惑をかけたくはないし、ちょうどいい。 「じゃあ、行こうか」  そう言って、伊藤君は迷いなく歩き始める。 「ちょっとまって。その方向には小学校しかないと思うんだけど」 「そうだね。小学校が目的だから」 「え? 」 「小学校、行くの? でも、今日は締まってない? 」 「今日は市民体育祭だよ」 「あ⋯⋯」  来る途中に見たマンションの掲示板を思い出す。たしかに、そう書いてあった。 「ということで、小学校には入れる。じゃあ、行こうか」  桜が枯れ、毛虫が地面にうじゃうじゃいる道をあるく。 「⋯⋯毛虫がいっぱい」  踏まないようにしながら、歩くのが大変だ。 「そうだね。でも、この道懐かしいでしょ?」  伊藤君がじっと地面を見ながらつぶやく。 「数年前まではこの道いつも歩いてたんだもんね」  もうあの出来事も数年前なのか。  無言の時間が気まずく、何か話題を探していると伊藤くんの方から口を開いた。 「⋯⋯毛虫わざと踏みつぶしにかかる奴いなかった? 」  リアルに思い出してしまい、鳥肌がたった両脚を少し擦り合わせながら歩く。  でも、そんな嫌な思い出すら懐かしい。 「あぁ⋯⋯、いたね」
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