3章

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 喜々として、踏みつぶしにかかる黒いランドセルの小学生と、キモーといいつつはやし立てるその友人たち。そして、本気で気持ち悪がって近づこうとしない女子の集団が目の前に浮かんだ。 「俺、いつもあいつの靴の裏どうなってるんだろうって思ってたんだよね」  伊藤君のその発言で、その男子の靴の裏をリアルに想像してしまった。 「やめてよ。想像しちゃう」 「ごめんごめん」  春は桜並木、それからは毛虫通りに変わる道を抜け、トンネルに入る。  トンネルの中は薄暗く、誰もいない。日が当たっていないからか、心なしか一気に冷え込んだように感じた。  コツコツと足跡が反響する。 「小学校の時は何も思っていなかったけど、改めてこのトンネル通るとなんか怖いね」 「確かに。でもさ、たぶん怖さを感じなかったのって常に小学生が歩いてたからじゃない? 」  伊藤君に発言で、また鮮明に風景が目の前にパーッとよみがえった。  いろんなところに塊で歩く小学生。  防犯訓練とか、周りはめんどくさがっていたけど自分は好きだった。  防犯訓練は同じ方向に住んでいる人たちで分けられる。その当時は、人づきあいがうまくなかったから、同じマンションの友達と一緒に帰れるということ、それと大人数で帰れるということに特別感があって好きだったのだ。 「斎藤さんはいつも凛と一緒に帰ってたっけ? 」 「うん。ほぼそうだったね」
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