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頷いた後にあれ? と首をかしげる。
果たして、伊藤君は凛ちゃんを呼び捨てで呼んでいただろうか。
「今、伊藤君、凛って言わなかった? 」
「言ったね」
まさか
「ついに付き合ったの? 」
「まだ、付き合ってないよ」
まだ⋯⋯ということは、付き合うことはすでに確定事項なわけか。
自信があって羨ましい。いや、この場合何としても捕まえるっていう意味なのかな。
「⋯⋯ こんなに問題を宙に浮かせたままで付き合えるわけないだろう?」
「⋯⋯それは、そうだね。ごめん」
そうか。だから、伊藤君は嫌いな私を呼び出して、二人行動をしてまで解決させようと思っているわけか。
やっと、理由が腑に落ちる。
「まぁ、それだけじゃないけど」
「え? 」
「こっちの話」
それ以上は教えてくれなさそうだ。
いくら友達が関わっている話だからといって、私が踏み込んで良い問題でもないだろう。
トンネルを抜け、階段を上ると小学校につながる坂が出てくる。
わいわいと楽しそうな声が聞こえた。
楽しそうな声が聞こえる中、私たちは無言で坂を上る。無言の空間はどうも居心地が悪く、必死で話題を探した。
「⋯⋯盛り上がってるね」
「そうだね」
「伊藤君と鈴木も市民体育祭出てたよね。グループは違ったけど」
市民体育祭のグループは子供会で分けられる。私のところはマンションだけで子供会ができていたため、マンションの違う二人とは同じグループではなかった。
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