3章

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 階段を上って遠ざかっていく背中を睨みつけ、そのあとそれを隠すように口と目を弓なりに歪めた。 伊藤君についていくと、職員室前で止まった。  こっちを振り向き、わざとらしく伊藤君は笑う。 「担任だった真鍋先生って覚えてる? 」 「覚えてるよ」  鈴木が事故に会ったときの担任だ。  真鍋先生は弱い生徒を気にかけるタイプだった先生だったから、私も気にかけてもらっていた。きっと、私が助けてくれといったら助けてくれただろう。  もっとも、大ごとにはしたくなくてそんなこと言えなかったけど。  そのせいか、鈴木は事故に会うまで嫌われていた。  ともあれ、私にとってはいい先生だったのだ。あの時、先生までクラスの人気者を尊重するような人だったら、きっと私は不登校になっていた。
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