1章

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 電車のドアが広がり、そこからは一気に騒がしくなる。鈴木の声を聞き落さないように、隣を歩く。 「数B? それは、また⋯⋯。一限から災難だね」 「そうか? 数学楽しくない? 」 「あぁ、そっか。鈴木、理系選んだんだっけ? 」  理系を選ぶだなんて、凄いなぁ。  素直にそう思う。私は、数学や理科が苦手だ。だから、それから避けるように文系を選んだ。  まぁ、文系を選んでも、数学から逃げられるわけじゃないんだけど。それでも、それを極めなくていいというだけでも多少なりとも救われるものがある。 「斎藤は文系だもんな。よく行くよなぁ。日本史とか世界史大変じゃないか? 人名に地名、出来事の名前いろんな事覚えないといけないし」 「そう? 覚えるだけだよ。それに歴史って面白いじゃない。人の感情があれほど心豊かに表れている読み物はないよ」 「表れてるか? 言葉の羅列だろ。ただ単に」 「確かに、言葉の羅列といってしまえばそこまでだけど⋯⋯。人名にしたって、その時代に生きていた一人の人間で、その時に考えていた考え方とかその時に好きだった人とか⋯⋯。いろんなものを想像するの楽しくない? 」 「ん~なかなか教科書の一文でそのことを推測するの難しくないか? 」 「それは、ネットとかで調べて、肉付けしていくの」
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