3章

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 自分の目線は丁度窓枠とぶつかり、一番下の窓に目線があったあの時の自分とは違う。おしりとひざの高さが同じに座れていたはずの椅子も今となってはひざの高さのほうが上だ。  しばらく、じっと窓の外を見て視線を左に移すと、伊藤君とばちりと目があった。  いきなり現実に引き戻される。  感傷に浸っていたことが恥ずかしくなり、目をそらす。 「⋯⋯あの時と比べたら、随分俺たち変わったよな」  伊藤君がぽつりと言葉を落とす。 「そうだね」  私たち以外誰もいないこの教室の静けさが居心地の悪いものに感じる。 「でも、変わってないこともある」  きっと、鈴木の事故のことだろう。 「傷も消えたし、事故について覚えてる奴なんてもう僅かだろう」 「そうだね」  確かに、伊藤君の言う通りクラスメイトもほとんど過去のこととして、忘れ去っているだろう。  中学、高校と変化の激しい日々を送っていたら、小学校の頃起こったことなんて記憶の表面からは忘れ去ってしまう。  言われたら、思い出すかもしれないが。 「さぁ、過去の清算を始めようか」  伊藤君が笑顔を張り付け、机の上に手を置いた。
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