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翌朝、青年は大音量の洪水に目を覚ました。
どうやらまだ雨だ。そう思って起き上がるが、外は馬鹿に晴れ渡っている。では、アレは何だっただろうか。目を擦って外界に視線をやる。
見ると、何十羽もの鳥が追われるように飛び立ち、不愉快なまでの音を立てた。あぁ、これか、と納得し、彼は大きな溜息を吐く。
と、妙なことに気がつき、彼は座ったまま眉をひそめた。猟銃がない。傍にいた筈の、少女の姿も、ない。
その代わりに、蛇の鱗のようなものが転がっている。しかし、あの少女に鱗があったろうか?
考えてみると、ないような気もしたし、あるような気もした。一瞬、脳裏に人魚のようなイメージが浮かぶ。
その途端、彼はすっかり目が覚めた。
きっと猟銃もコートも何もかも、最早戻ってはこないだろうという強い確信が、彼を支配した。
選べないのなら、死ぬしかない。それを体現したのだろうか? だとしたら……そう。
最初から選択肢などなかったのだ。青年はそれを教えただけだった。
何にせよ、今までと同じように、彼と人との接続が絶たれただけのことだ。大丈夫、何も変わらない。また1人、この世を儚んでいなくなっただけのことだ。結局、救えなかっただけのことだ。
少女との接点は、少女自身によって絶ち切られた――その所為で僕は、未だ世界の中にいられる。そうするしかないと、彼女に宿命づけられた。
彼は酷く渇いてしまった笑みを漏らし、それきり、目を閉じて黙った。
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