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第8話
「ここが、倉庫の場所。」
そう言って花梨は、画面上の赤い点をさす。どうやら、大きな廃工場の一角にあるらしい。
「ここって、俺の家の近くじゃね。」
家から、自転車で40分ぐらいでつく所だった。
「そうなの。行っていい?」
「まぁ、これを潰してからな。」
倉庫を指差して、そう言った。
「わりぃ。少し、電話してくるな。」
「ん、。」
◇
「もしもし、本田さん。ドミニオンの倉庫場所が分かりました。」
「ほう、凄いね。こちらもまだだというのに。」
感心したような口調で誉める本田さん。
「ええ、こっちには凄腕のハッカーがいるので。」
「頼もしいね。そう言えば、今から本庁に来れるかい。君に隊員を紹介したいのだが。」
「大丈夫ですよ。40分くらいで行きます。」
電車を使えばこのくらいで着くはずだ。
「なあ、どうだい。その凄腕ハッカーも〈蓋世〉にいれてみないか。」
本田さんが唐突に切り出してくる。
「いきなり何ですか。」
「凄腕なんだから、こっちのデータと組み合わせるとシナジー効果が生まれるんじゃないか。」
シナジー効果ねぇ。そんなの意味は無い気がするが、花梨の人見知りを直すのにもってこいだ。
「しかし、彼女は、、、、」
「女子なのか。君はつくづくモテそうだね。」
嫌み口調に変わり、軽く笑われる。
「課長、無駄口はいいから。」
「で、まぁ連れてくるといい、みんな歓迎するさ。」
「そういう問題じゃないんですが。てか、本当適当ですね。じゃあ、切りますよ。」
「ああ、よろしくね。」
◇
「なあ、花梨。少し俺の予定に付き合ってくれないか。」
「ん、いいよ。瞬一が一緒なら。」
頬をゆるませながら、そう答えた。
「ん?ああ、ありがとう。」
「じゃ、駅に向かうぞ。」
「分かった。」
◇
「でも、どこへ行くの。」
電車に揺られていると、花梨が聞いてきた。
「じゃあ、当ててみてよ。正解なら、何か買ってやるよ。」
「本当?」
「ああ、当たらないと思うけど。」
至極一般で平々凡々の普通の高校生なら行かないからな。警察署本庁なんて。
「むぅ。じゃあ、ショッピングモール。」
「違う。」
「スポーツセンター。」
「違うなぁ。」
「ヒントは?」
「買い物に行くわけでは、ありません。」
「ゲームセンター。」
「違うんだなぁ。普通は行かないところだからな。」
犯罪者か警察の偉い人以外はいかねぇな。
「まさかの学院?」
「やだよ、学院長に会うじゃないか。」
「うー、分かんない。」
首をかしげて、悔しそうにしている。
「じゃあ、着いてからの秘密ってことで。」
◇
「よし、ここで降りるぞ。」
「?ここの近くに何もない。ビル街だし。」
「まぁ、そうだな。他にあるとしたら、市役所か警察署くらいか。」
「まさかの警察署?でも、なんで本庁?」
「そう、そのまさか。」
「何か罪犯した?」
「いや、何もしてないぞ。」
「じゃあ、何で?」
分かんない時、首をかしげるの可愛いな。
「そのうち、分かるさ。」
◇
警察庁の前に立つと、警察官っぽい人が出てきた。
「こんにちは、天河隊長。本田課長から、話を伺っておりますので。」
「はぁ、どうも。ありがとうございます。」
「! 瞬一って、警察官だったの!」
俺の後ろに隠れた花梨が聞いてきた。そう言えばこいつ人見知りだったな。
「ああ、つい最近入ったばっかの新人だけど。」
「でも隊長って、言われてた。」
「その話は後々に。 すみませんが、本田さんの所まで案内お願いしていいですか?」
「はい、ではついて来て下さい。」
「花梨もついてきてくれ。」
◇
「課長。天河隊長が来られました。」
コンコンとドアをたたきながら、案内してくれた警察官が言った。
「ああ、ありがとう。」
ドアを開け、出てきた本田が言った。
「どうもこんにちは。本田さん。」
「ちゃんと連れてきたんだね。」
「一応、花梨はこっちの事情を少し知っているので。」
「じゃあ、紹介しよう。君の隊員達だよ。」
部屋の奥には3人の男女が並んでいた。
「どうも、こんにちは。姫野 夏稀です。年齢はヒミツ。〈蓋世〉の副隊長になりました。ちなみに、瞬一君の補佐係でーす。」
お姉さんっぽい雰囲気を漂わせた20代後半あたりの女性が自己紹介をした。
正直言って、あまり得意じゃないタイプだ。
「今、『うわっ、この人苦手だ。』って思ったでしょ。」
いや、エスパーかよ。怖っ。
「そんな怖がらなくてもいいのに。」
「じゃあ、次は俺でいいか。」
いかにもマッチョです。っていう体格をした男が言った。
「俺は、金剛 望だ。趣味は筋トレ。体力を使う、重作業を担当する。」
やべぇ、強そう。力だけなら、爺ちゃん超えてるし。
「わ、私は、吉野 言葉でしゅっ。機械整備、情報処理な、などを担当します。」
ひどく赤面しながら、そう言った。
トジッ子っぽいな。あと、何か花梨に似てる。
「課長、俺も自己紹介した方が良いですか?」
「良いけど、まだ彼らの方が終わってないよ。」
「何言っているんですか?」
「3人とも、終わったじゃないですか。」
「3人じゃないって言ったら?」
まさか、と思い周りを見回す。居ない、居ない、居なi、居た!
吉野さんの隣にひょろりと長い、陰の薄い男性が立っていた。
全然気配感じなかったんですけど。強くね。
「どうも、こんにちは。柳 清雅です。敵組織への侵入、捜索などを担当します。ちなみに、自動ドアは、僕には反応しません。」
なんか、可哀想だな。柳さん。てか、目を離すと認識出来ないんですけど。
「じゃあ、今度こそいいですね?どうも、天河 瞬一です。なんか、〈蓋世〉の隊長になりました。僕は、ドミニオン討伐には、力を出し惜しみしません。よろしくお願いします。」
「そちらのお嬢さんは。」
そう本田さんが急かしてくる。
「なあ、花梨。いきなり何だが、俺らの部隊に入らないか?別に嫌なら断ってくれていい。」
花梨を勧誘してみる。
「ん。いいよ。」
即答で、了承が帰ってきた。相変わらず、俺の後ろに隠れたままだが。
「いいのか?つらいかもしれないぞ。」
「うん。大丈夫。」
「じゃ、よろしく頼むよ。」
本田さんの呼びかけには、コクッと頷いただけだった。
「花梨。自己紹介できるか?」
ブンブンと首をふっていた。どうやら、無理らしい。
「えーっと。こいつは、東雲 花梨です。なんか、自作の量子コンピューター使っているらしいです。天才ハッカーです。」
花梨が後ろで、めっちゃ恥ずかしそうにしているんだけど。
「じゃあ、よろしく頼むよ。特務課の特殊精鋭部隊〈蓋世〉の諸君。」
ここに、蓋世が正式に発足した。
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