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…その時がいつ来ても…
大きな後悔などは無かった。自分の一生が短い事はとっくに分かっていたから『常にやれる事を思いっ切りやる』生き方をして来た。
特にヴァシュロークはセレにたくさんの事を教えてくれた。
ヴァシュロークはセレの父の従兄弟であり、王家の血筋には珍しく髪も瞳も金色だ。全てにおいて優秀であり、魔法使いとしても『偉大』な力の持ち主だった。
セレはそのヴァシュロークに、語学、歴史、数学などの学問、そして、政治学、王家に生まれた者の心構えなども叩き込まれた。
机上の勉学に加え、セレの体調が良い時には外にも連れ出して至高の芸術…演劇や音楽にも触れさせた。
身分を隠して、庶民の生活も体験させてくれた。農夫と共に畑を耕し野菜の苗を植えた事もあった。
魔法の技術も一から教えてくれた。魔力は強くても、力加減や波動の調整どころか呪文の扱いすら分からないセレに、手取り足取り一つ一つ教えてくれた。
…楽しい事ばかりだった…
現実には、セレの置かれた立場は切なく厳しいものだ。
『王位継承権は第一王子に』という掟がロストークにはある。セレには王家の象徴である緑の瞳も強い魔法の力も備わっていた。だが、王としての努めを果たすなどセレの虚弱な身体では到底無理だ。
『殺してしまえ』と言う声が身内や重臣から上がったであろう事は想像に難くない。
だから、セレは産まれてすぐに王宮を出され、深い森の中のこの離宮に移された。セレの存在は極秘にされた。
セレがいなければ、次に産まれる男子を何の問題も無く王位継承者にできる。
『何の問題も無く』だ。
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