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母も、王妃という立場で忙しい身ではあったが月に一度は会いに来てくれた。
食べ物や服などのセレの好みを使用人から聞きまくり、気に入りそうな物をいつも持って来た。
もっとも、セレは、物に対しても人に対しても『好き嫌い』を言うものではないと躾けられていたから、はっきりとした好みなど出さなかった。
それでも、家族同様に接してくれる使用人…特に庭師と料理人にはそれなりにバレていた。
これも確か12才頃の事だ。
母、レイムが大きな毛布と枕を両手いっぱいに抱えて来た。
「セレ、今日はふわふわの毛布と枕を持って来たの。触ってみて!」
セレがふんわり柔らかな手触りの物が好きだという情報を得ていたのだ。
自分で運んで来て、セレのベッドに『ぽーん』と投げ置いた。おしとやかな行為とは言い難い。
レイムは、快活で人と話すのが大好きで、好奇心旺盛な女性だ。セレは顔立ちは父親に似ていたが、性格は母親に近かった。
「…ホントにふわふわだ…。気持ちいい。有り難うございます!」
毛布と枕を抱き締めて笑顔になったセレに、レイムも満足そうだった。
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