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「良かった。どの職人に頼もうか悩みに悩んで、みんなに評判を聞いて回るだけで一ヶ月もかかったのよ!」
「母上…」
セレは、そんな母のストレートな愛情に触れる度に幸福感でいっぱいになった。
寂しくないと言ったら嘘になるが、不幸だと思った事は一度もない。
母はセレに何でも話してくれたが、面白い話しが多かった。
…先日見た歌劇の主役が素晴らしい男前だったので写真を撮らせてもらってお面を作り、侍従長の顔に暫く付けさせておいたとか…
…ヤールの学校の教科書を料理のレシピ本とすり替えておいたら、ヤールがちょうど先生に読み上げの指名を受けて大恥をかいたらしいとか…
「母上の話しは滑稽本のようです。」
セレはいつも吹き出してしまった。
一緒に過ごせる時間は少なかったとは言え、母と弟とは数々の楽しい思い出がある。心の繋がりを常に感じていた。
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