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「美月か、ちょうどいいところに来たな。このノートをみんなに持っていけ」
先生から渡されたノートの束を崩れないように抱えて階段を降りていたら。
あっ!
階段を踏み外してノートを投げ出し体が宙に舞った。
───やだ、落ちるっ!
目をぎゅっと閉じて痛みが来るのを覚悟した時、不意に体がふわりと浮いて誰かの腕に抱き留められたのに気づいた。
「大丈夫か?美月」
「し、白瀬、くん?」
おそるおそる目を開けると白瀬くんの姿が。
白瀬くんの上に落ちたんだと気づいて慌てて白瀬くんの腕から降りた。
「ケガはないみたい。ごめんなさい、階段から落ちちゃって……あの、助けてくれてありがとう」
お礼を言うと。
「……いや、助けられたのは俺の方だ」
え?
白瀬くんの言ってる意味がわからずに首を傾げると、
ノートを拾い集めるとそれを持って白瀬くんは背中を向けた。
「重いだろ?俺が教室に持ってくから」
「え?あ、うん。あ、ありがとう」
その背中をわたしは自然と追っていたのだった。
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