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小学五年生の時、オノマトペを探そう。集めようという授業があった。
オノマトペという、初めて聞く言葉の語感も面白くて夢中になった。
雨の音は、しょぼしょぼ、しとしと、ぽつぽつ、ぱらぱら、ばらばら、ざあざあの順番で、雨の勢いを表す。と、辞書に書いてあった。
でも、耳の中で聞こえている雨音は、もっと沢山あって、ノートに書き出して調べると、それは雪が降る音だったり、風が吹く音だったりするのがわかった。
夏休み、作文の宿題に僕は、左耳に降る雨のことを書いた。
それまで、別に内緒にしていたわけでもないし、自分にとってはごく自然なことだったのだが、それが、何かの作文コンクールで賞を取って、僕が耳に障害があると、全校に知れわたってしまったのだ。
それは、本当に変な感じだった。
自分では障害だと思ったことはなかったのに、なんとなく、友達の視線が今までとは違うような、違う違うと弁解すればするほど、優しい憐みだったり、意地悪だったり、母は担任の先生のことを凄く怒っていたし、それまで知らずにいた感情に晒されることになった。
心療内科の七海先生は、
「梨音君の中で聞こえる雨音がモニターとかに映し出されたらいいのにね」
と言った。
そして、
「目に見えるもの、耳に聞こえる音
同じものに触れても、人其々感じ方や表現は違うから、友達や先生や大人が色々なことを言ったとしても、梨音君が何を感じているか、どんな風に考えているかというのが大事なんだよ」
と、優しく微笑みながら言った。
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