雨音

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リィは男の子の膝の上で大人しくしていた。 お菓子の皿の側に、子猫のミルクと書いたパックが置いてあった。 「リィ、ミルク貰ったんだね」 「リィ?ミィだろ?」 「えっ?リィだよ」 「俺はミィって呼んでる」 「ええっ?」 「お前、自分がリオンだからリィなの?ミィミィ鳴いてるのに」 「えっ、なんで僕の名前知ってるの?」 「バッグに書いてあるじゃん」 「あ、そうか。ん、じゃ、ミリィにする?」 「ミリィ?まぁいいけど…」 「名前…何?」 「ミリィだろ?」 「違う。自分」 「俺?俺は、ソウ」 「ソウ…」 「そうだよ。あ、ん、ソウ」 「子猫のミルクってあるんだね。ソウちゃんが持って来たの?初めて見た」 「うん。今、いっぱい飲んだから眠くなってるな」 「可愛いね」 「俺、今、コイツの母ちゃん探してるんだ」 「迷子?」 「わかんない。雨降ったりすると可哀想だし。リオンも降ってるね。雨…」 「えっ?なんでわかるの?」 「わかるよ。左側。雨の音聞こえる」 「聞こえる?」 「うん」 「ソウちゃんには聞こえてるんだ」 僕はなんだかとても嬉しくなった。 聞こえると言ってくれる子も居るのだ。 僕の中に降る雨音が、聞こえている。 この青い髪のソウちゃんの耳にも届いている。
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