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私の参加が遅かったため、その乾杯の後30分程で解散。
皆が駅に向かう中、私はバス停へと歩いていく。珍しく、川島さんと一緒だ。
川島さんはこれから、ご実家に帰るとのことだった。
「わざわざ来てくれて、ありがとな」
「ご結婚、おめでとうございます」
にこやかに、一言告げる。
一気に脈拍が上がったのが自分でわかった。心臓が大量の血液を吐き出すその激しさで、痛い。打ち込まれるような拍動の衝撃のせいで、吐き気すら感じる。
しかしそれは決して嫌なものではなく、むしろワクワクと浮き立つような期待そのものだった。
結果への期待ではない。今まで出せなかった一歩を踏み出す行為そのものへの、純粋な緊張による、興奮。
「荷物すごいですね」
川島さんは、大きなプレゼントを抱えていた。
今日は、勤務先の青年会からの結婚祝い、という名目のランチ飲み会だった。結婚式は身内だけで済ませるそうで、その為に今日の会が催された。
このプレゼントには、もちろん私も噛んでいる。川島さんがコーヒーメーカーを欲しがっているという情報を引き出したのは、他でもない、私だ。
「重くないです?」
「重いよ!」
間髪入れず返ってきた声が可笑しくて噴き出してしまった。
体の奥から沸き上がる震えが、止まらない。
「持ちましょうか?」
「そんな気遣いするなら、店から直接家に送っといてくれよー」
「いや、だって、沢さんが」
「やっぱ沢かぁっ」
ちくしょうっあいつ、と、川島さんが楽しそうに悪態を吐く。
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