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結婚生活を送り始めてからも、川島さんはやはり私の仕事仲間だ。
お互いの告白を機にわだかまりができるかなと少し不安だったが、そんなことはなかった。
……いや。むしろ以前より距離が縮まった気がする。川島さんが作る私との距離感が、近い。
露骨に誘われるというのではない。“仕事仲間”という関係を貫いてはいる。
それなのに、川島さんが私をより身近に感じていることが確信できる。
変化はちょっとしたものだ。
以前より、目が合うことが増えた。
目が合ったときの笑い方が、甘い。
何でもないことで、律儀に絡んでくる。
ちょっとした会話でも、体に触れてくる。
私の変化に敏感になった。
優しさの発露が、細やかで頻繁になった。
何かと食事や飲みに誘われ、以前より相談事が増えた。
……弱味を晒すようになった。
……甘えてくるようになった。
……お願いゴトに躊躇がなくなった。
私への甘やかな賛辞も。
熱を帯びた突き刺さるような視線も。
切なげな瞳も。
飲みすぎた時に私の頬を辿る、繊細な指先も。
……全てが、以前とは違う。
愛を告白し合ったからこそ手に入れることのできた、川島さんからの“特別”だった。
いつ、ホテルに誘われるだろう。肉体関係を迫られたら、私はどうしよう……いや、不倫は絶対いやだ、でも……
一体、どれ程悩んだか。
……全て、杞憂だった。
川島さんは、決して一線を越えなかった。
一線を越えそうな気配だけはさせて。
そこまで。
これは、なんだろうか。
セックスさえしていなければ問題ないという、川島さんにとって都合の良い関係なのだろうか。
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