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この関係を、イビツだと感じないわけではない。
川島さんに抱かれたいと、いっそ襲いたいと願わないわけはなく、それが叶わないことに不満がないわけでもない。
それでも、こんな形の幸せがあっても良いと、どこかで考えていた。
元々、一人で楽しむ術を持っている。自己完結した人生を満喫している。
だからこそ、伴侶とする人物にこだわっていたのだ。私が見定めた相手でないのなら、私の人生に必要ない。そう、断言できた。
しかし、今の川島さんは、私にとって何だろう。
私にとって川島さんが“都合の”良い相手、なのだろうか……。
そうなのかもしれない。
いや、そうに違いない。
しかしそこまで淡白に割りきれない。
ずっと、好きだった。
今でも、好きだ。
これからも、この気持ちが膨らみこそすれ、萎むことはないと思える。
今、彼から大切にされ、彼を大切にすることを望まれ、そんな遠慮のない関係に幸せを感じる。
それはどこか、穏やかで優しい雨のような静かな幸せだった。
……それでも私は、この雨を、部屋から眺めるほどの落ち着きをもって受け入れきれてはいない。
私自身が、雨にさらされていた。
もしかしたら、霧に覆われ見えなくなっている何かすら、あるのかもしれない。
私の雨は、温かく優しく、しかし止むことなく、私を濡らし続ける。
終わり。
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