むかしむかし、あるところに

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むかしむかし、あるところに

「ねぇ、最近、キレイになった?」 立花輝明にいきなりそう話しかけられて、こずえは、 「は!?」 ポカンと口を開ける。 「それ、私にいってます?」 「うん、深見こずえさん、キミにいってます」 輝明が浮かべる笑顔は、社内の女性たちから『プリンスの微笑み』とウワサされる完璧なものだ。 眩しすぎる。 だけど、 「私、あまりヒマじゃないんです」 こずえはイスを鳴らして立ち上がる。 「ヒマじゃないって、まだ昼休憩だよ」 逃げ出すように歩き出したこずえの前に、輝明は回り込んでくる。 腰をかがめて、こずえの顔を覗き込む。 「忙しいのは仕事じゃなくて、髪型を変えたり、メイクの研究って意味かな」 「な、なんでそれ!」 こずえは青ざめる。 誰にも気づかれていないはずなのに、なぜ輝明が知っているのか。
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