15人が本棚に入れています
本棚に追加
むかしむかし、あるところに
「ねぇ、最近、キレイになった?」
立花輝明にいきなりそう話しかけられて、こずえは、
「は!?」
ポカンと口を開ける。
「それ、私にいってます?」
「うん、深見こずえさん、キミにいってます」
輝明が浮かべる笑顔は、社内の女性たちから『プリンスの微笑み』とウワサされる完璧なものだ。
眩しすぎる。
だけど、
「私、あまりヒマじゃないんです」
こずえはイスを鳴らして立ち上がる。
「ヒマじゃないって、まだ昼休憩だよ」
逃げ出すように歩き出したこずえの前に、輝明は回り込んでくる。
腰をかがめて、こずえの顔を覗き込む。
「忙しいのは仕事じゃなくて、髪型を変えたり、メイクの研究って意味かな」
「な、なんでそれ!」
こずえは青ざめる。
誰にも気づかれていないはずなのに、なぜ輝明が知っているのか。
最初のコメントを投稿しよう!