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「お前も気になったのか」
一人教室に戻り、猫屋敷の遺体を前にしていた藍の背中に声をかける人物がいた。
——成志だ。
「成志さんもですか」
「まあな」
「なんだか気になって。具体的な理由とかはないんですけど」
日頃人と話すことをあまり好んでいない藍だったが、なぜか成志とはすらすら話すことができた。
もう一度部屋の中の様子を見渡してみる。
猫屋敷の死体は窓よりのところに転がっていた。その死体を中心に教室が焼け焦げた跡がくっきりと残っている。
猫屋敷の死体は炭化とまではいかないが原型をかろうじてとどめている程度だった。
多分猫屋敷はクーラーはついていない部屋だったため、風がより届きやすい窓際にいたのだろう。
「違和感を感じますね」
藍が小さくつぶやいた。
「生きたまま焼かれたにしてはあまりにも抵抗した後が少ない。
普通寝起きに自分の体に火がついていたらもっとパニックになって消そうと暴れ回るんじゃないでしょうか」
「眠り薬を使われたとかの可能性は考えないのか」
「あり得ません。だったら犯人はクーラーを壊してわざわざ窓を開けさせる必要がありません」
その殺したかった人物が猫屋敷でも尾宅でもそれは関係ないのだ。
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