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この着信音を設定しているのは、あの子しかいない。手にしたケータイはひんやりとしていたが心はほんのり温かかった。私は目を擦りながら受信トレイを開く。
『くるみ、大変なことが起こったよ。ニュースをみて!』
文面を確認するなり、私は急いでケータイのWebボタンを押した。その見出しはポータルサイトのトップにあった。
――信じられない。その事実に私は思わず叫んだ。
さっきまで眠っていた友人がなあに、と迷惑そうに言うのを横目に、震える手で見出しをクリックする。記事を読んでいると、画面の上部でメールの受信マークがチカチカと点滅した。受信トレイに入るのとほぼ同時に私はそのメールを開く。
『ねえ一緒に行こうよ』
あの子の少し低い、はっきりとした声でそのフレーズが再生される。心が躍った。思わずケータイを抱きしめた。それから「私たち、ふたり一緒ならどこへでも行ける」そう確かめあった春の始まりの日のことを思い出していた。
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