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なんでもないような佇まいなのに格好良くて。余裕があって、ユーモアがあって、ブレない自分を持っていて……。
彼氏? いえいえ違います。私にそのようなものはおりません。じゃあ誰かのことかって? それは――
「奥田民生です」
私がそう言うと皆がきょとんとした顔をした。シンとした音楽室にウグイスの下手な鳴き声がケキョ、と響く。しばらくしてへー、という先輩の間延びした声が後ろから聞こえた。
「どんな音楽きくの?」そう尋ねられたら必ずこう答えることにしている。だって民生が好きだから。すると決まって、よく分からないな、という反応が返ってくる。名前は聞いたことあるとか。くるみは自分の好きを貫いていてすごいね、などとなぜか褒められたこともあった。
けれど私がほしいのはそんな褒誉ではない。「民生格好いいよね」というたった一言だった。
それも半ば諦めかけていたが、今回ばかりは違うのではないかと思っていた。だってここにいるのは高校生で、軽音楽部員で、つまり皆は音楽が、ロックンロールが好きなのだ。そして民生は日本一のギタリストなのだ。
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