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しかしどうだろう。その反応はこれまで私が経験してきたものとそう変わらなかった。
ちなみに他の新入部員がよく聴く音楽としてあげていたのは、インディーズの某ダンスロックバンドや某サブカルバンドだった。一般的にはそれらがマイノリティだと思うのだが、ここでは私がマイノリティのようだ。
こんなとき私は決まって「普通」というもののありかについて思いを馳せてしまう。
つまるところそれは自分の属する集合体によって決まる相対的なものだ。そんなものによって自分の考えを変えてしまってはいけない。自分の好きは絶対的であるべきだ。そうして私は民生への思いをさらに強くするのである。
そのとき、静まりかえった空気に波紋を広げるように顧問の先生が感想を述べた。
「奥田民生かあ、渋いね」
いやいやそんなことはない。私は心の中で否定する。確かに現在進行形の民生は渋いかもしれない。齢も四十を過ぎ、大人の魅力を湛えていると思う。しかしすでに解散してしまったバンド「ユニコーン」のボーカルを務めていた頃の民生はアイドル並みにキュートだ。『ケダモノの嵐』の頃は色気たっぷりだし、『PANIC ATTACK』の頃なんてはちゃめちゃに可愛い。
そう言いたかった。好きなものを好きだと。でも波風は立てたくない。結局私は肝心なところで弱気なのだ。何も言えずに固まっていると後ろから声がした。
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