9人が本棚に入れています
本棚に追加
ソロよりもユニコーンの頃の民生が好きという点でも私たちは一緒だった。八〇年代バンドブームサウンドの手習いみたいな初期、へんてこでシニカルな個性が花開いた中期、個々が音楽性を突き詰めた結果、分裂していった終末期。全てひっくるめてみどりは好きだといった。私も一緒だった。
私たちはすぐに仲良くなり、当たり前のようにバンドを組んだ。
パートを決めるとき、みどりは言った。
「ギターかベースかドラムならできるよ」
私は驚いた。そして民生みたいだと思った。
「ピアノは? できないの?」
できるはずだと思ったのだ。私がそう問うと、
「ピアノはいい」
みどりは目をあわさずに言った。
「くるみがやるといい。阿部ちゃんだよ」
それから私の方を見て笑った。
阿部ちゃんはユニコーンのキーボード担当で、おちゃらけ担当でもある。ルパン三世やフレディ・マーキュリーの変装をしてステージに立つ彼の姿を、古本屋で収集した音楽雑誌でみた。そこだけ切り取ったら目立ちたがりの調子乗りだ。
けれど阿部ちゃんは途中から加入したから、そうやって自分の位置を確立しようと一生懸命だったのだと思う。ボーカルなのに前へ出たがらない民生に代わっていたともいえる。それはとても客観的な行動だ。そういう意味で私は阿部ちゃんを尊敬していた。
そうして私はキーボード担当になった。そんだけ民生好きなんだったらやるしかないでしょ、という周りの推薦でみどりはギターボーカル担当になった。
最初のコメントを投稿しよう!