深夜に刺さる時計針

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深夜に刺さる時計針

夜が来る度に思い出す感情。昔は深夜が憧れだった。子供には与えられない大人の世界。見たことない面白いテレビやコンビニにたむろするヤンキーや危ない大人たち、何にも守られていない自由な世界がそこにあるんだと思いワクワクしたこともある。 夜ふかしを覚え飲み会だ、オールだ何だと遊び始めた大学生のはじめ。憧れていた世界に一歩踏み入れて楽しかった。僕のような人間も楽しめるんだ、いままでの遊びは子供の遊びだったんだと。ジャングルジムやブランコを無邪気に楽しむ子供を見る立場になったときと同様に大人の階段をまた一歩踏み進めたのだと思っていた。そしてこれからもこの階段を登っていくことができるのだと。そんな浅はかな考えに心囚われていた。嫌なことから目を背けながら。 足を踏みすすめるのは勝手に時がやってくれるものだと思っていた。小学生時代。今よりずっと真面目で授業では発言をしてわからない問題があったら誰かに教えてあげて。みんなの勉強を引っ張っていっているのだと、僕は勉強ができるんだからそうするべきなんだと、思って意気揚々と声を上げていた。僕は発言の度に自尊心を確かにためていき自然と問題に答えれられない周りをどこか下に見ていくことになっていったのだ。そんなことがたたったのかは知らないが気づけば挙手をする度に、回答を発言する度に周りから嘲笑されるようになっていったのだ。周りから頼られていると思っていた僕は、周りの人間より上にいると思っていた僕は、周りから見てみればアホらしいピエロだったのだ。授業でやたら発言するぽっちゃりの人間なんてクラスのいじめの対象に丁度いい存在だったのだ。次第にクラスに行き詰まりを覚え、人の前で声を出すのが怖くなった。ぽっちゃりの体型でいることが怖くなった。人にどんな形でも弱みを見せるのが怖くなったのだ。それはいじめに直結するのだろうと。そんな気持ちを抱え受験も微妙な結果に陥る。何のための努力だったのだ。何の自尊心だったのだ。ともにおなじ不遇の扱いを受けていた友はそれでもいい学校に進み苦難を乗り越えた。次のステージへと足を進めたのだ。僕は底に取り残された。その壁から目をそらし、引っ越しもあって別の学校に行くことになった。 だが、時は優しく僕を守ってくれた。以前のような自尊心もなければ弱みも見せずにうまく立ち回るような生活を贈ろうとするようになった。一度ついた傷は時のおかげで止血されかさぶたが残り続けることとなった。 だが、今までを捨てたことで自分がわからず人に影響をされてその人その人合わせた話し方考え方を持つ、先の見えないペルソナ生活を送ることになってしまっていたのだ。それは結局進むべき壁から目を背け続けることに、時に、流れに身を任せて放浪することでしかなかったことに過ぎないことに気づけていなかったのだ。 そのことに気づいたのは、周りに任せて楽で楽しい方に、辛いことから目を背けていれば傷がうずくことがないと逃げ続け、みっともなく大学生活を何年も続けることになっている。まわりからおいていかれ続けている今になってのことだった。小学生の頃から足掛け10年歩いてこなかった。あるき方も忘れてしまった。だが、目を背けることに慣れてしまった僕の周りには壁しかなく、壁に囲まれた中からみっともなく小さく生活して、これが人生だ。これこそ僕にあっている、なんてしょうもなく思うことしかできていないのだ。 壁に囲まれた世界は、この暗い箱がそのまま部屋と直結しているようだった。窓越しに世界とつながっている 世界はいつでも回ってる、時は止まらず平等に残酷に進み続ける。そんな中止まった足を進めるやり方欲して、それからも今日も逃げようとして。 何度も脱線してきた人生だ、壁のたびに道を変えれば良いと思ってた、時が解決してくれてきた。時に頼りすぎたのかもしれない、今度は恩人であった時に苦しめられる。真綿のようにじわじわと、心の中に止まった時間が溜まっていく。くさびの打たれた僕に否応なく残酷に。 笑うたびに何かが沈殿していく。それで良いのかと、こんなことをしていて良いのかと、贖罪のように、救いを求める声がする。 だからこれはこんな足を踏み外し続けた、逃げて怯えて諦めかけてきた人生を遅ればせながらも前をあるき続けている友の背中を追って歩こうと、そんな妄想に浸って助けを求める贖罪の、ぼこぼこに穴が空ききってしまった自己肯定感を埋めるための、どこまでも自分に直結した文章なのだ。
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