第一章(共通ルートⅠ)

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Case1 リントヴルム  リントヴルムの第一段階イベントは、一番早い段階で起こる。イベントを起こすのに必要なパラメータも好感度も低く設定してあったはず。ここでも似た感じらしく、おそらく4人の中で一番最初にイベントに該当する出来事が起こったようだ。  何故わかるか? その日から明らかに様子がおかしいからだ。  果たして、何があったか、どのように思っているのか、漏れ聞こえてくる心の声に、少し耳を傾けてみよう。 ******  まったく理解できない。  何故父上はあのような者を”教師”としてお呼びになったのか。  他の3人はともかく、この僕にまで。  授業をすれば忘れ物をする。  貴重な資料に直接書き込もうとする。  挙句、生徒である僕の方が間違いに気付く。まぁこれは僕がそれだけ優秀であるということだから、仕方ないと言えば仕方ない。  しかし……歩けば転び、走れば転び、しゃがんでも転び……。  何かを持ち運べば5分と経たず人にぶつかる。  そんな者からいったい何を学べと言うのか……。    首都の学術研究院を首席で卒業したというからどんな秀才が来るのかと期待していたのに……あそこの秀才たちがどうしてあのドジ娘に劣っていたのか、それも理解できない。  まぁ、間違いを指摘したら素直に認めて謝るあたりの素直さは認めてもいいが。  今まで僕についた家庭教師は、大抵優秀さを鼻にかけた鼻持ちならない連中だったからな。間違っていると気付いたから指摘した途端、化け物を見る目か、自分を否定するモノを蔑む目か、どちらかを向けられた。  そして、素直に相手を褒めちぎるレオン兄上のもとに、皆集まった。  だがあのソフィーという教師は、僕が指摘すると一瞬慌てて、そして自分の持つ資料に書き込みをして、そして……頭を下げた。  自分の認識違いを恥じて、またそれを生徒である僕に言わせてしまったということを、素直に詫びてきた。  その点には、驚かされた。  大人たちにいい加減ウンザリしてきたから、今度、間違いを認めずに不当に叱りつけてくるような教師ならば、完膚なきまでに叩きのめしてやろうと思っていたのに。  完全に、出鼻を挫かれてしまったじゃないか。  まぁ、転んだり落としたりぶつかったりを繰り返すドジさは確実にあるのだから、まだまだツッコミどころは山のようにあるんだが……。  まぁ……もう少し、様子を見てみるか。
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