25人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
物語は、主人公のノックから始まる。庶民の生まれの主人公が、急に皇子たちの家庭教師をすることになり、緊張で眠れなくて、よりによって王宮に上がる日に寝坊してしまうのだ。
中で待つ皇子たちは怒っているだろうか。どんな人たちが待っているんだろうか。自分はきちんとやれるのだろうか。
そんなことを考えてしまい、ノックをするも、ドアを開くことを躊躇していた。すると、扉が中から開かれるのだーー!
******
そんなわけで、私は今、皇子たちとともに家庭教師の先生をお迎えしている。
ノックしたのにいつまでも入ってこないのでこちらからドアを開くと、そこには驚きと萎縮とが混じり合った瞳をした小柄な少女がちょこんと立っていた。
彼女こそ『ソフィー=ケイテ・クライン』。
ちょっと残念な皇子たちを教育するために呼ばれた家庭教師だ。
「クライン様でいらっしゃいますか?」
「は、はい! 遅くなって申し訳ありません!」
すごい勢いで頭を下げるものだから、髪がぐしゃぐしゃになってしまっている。
皇子たちの第一印象が悪くなってしまうのではないかと思って慌てて壁になろうとした……が、遅かった。ドアが開いた瞬間に、皇子たちは彼女の動きに釘付けになっていた。
――なかなかに素早い身のこなしだな
――元気が有り余っているのか……もう少し静かに声を出せないのか
――髪が乱れている。美しくない……
――あんなちっこいのが教師って……
以上が、皇子様方の第一印象だ。
ゲームでは驚いているという印象しかなかったが、内心ではこう思っていたとは……。いや、驚いている場合じゃない。この場は私が取り仕切らねば……。
「殿下……こちらが今日より皆様の教師としてお越しになられた『ソフィー=ケイテ・クライン』様です」
「どうぞソフィーとお呼びください。よろしくお願い致します」
最初のコメントを投稿しよう!