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「俺、田舎に帰ろうかな……」
そう呟くと、妹は声のトーンを上げた。
「ホントい? みんな喜ぶよ! シゲもハルちゃんもアオ兄も! また酒盛りさなるねぇ」
懐かしい名前に顔がほころぶ。身内とはいえ、喜んでくれる人がいることが素直に嬉しい。久しぶりに地元の酒で酔って、気楽に騒ぎたい気分だった。
また連絡すると言って電話を切ると、俺はアパートの小さな窓から灰色の夜空を見上げた。
チクワを拾った夜みたいな、満天の星が恋しい。
ダイヤモンドより輝いてるよ、なんて言うつもりはないけど、本当はあれを、麻友奈ちゃんにも見せてあげたかった。手を繋いで、並んで夜空を見上げて、隣で笑ってほしかった。
未練たらしいな、俺。
笑ったら、涙が零れた。
東京は、眩しくて、灰色で、しょっぱかったよ。
いつか故郷の星の下で、誰かに笑って話せる日がくるといいな。
俺はそう思いながら、彼女の連絡先を消去した。
【了】
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