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「石田さん!」
約束の10分前に着くと、麻友奈ちゃんはもう席に座って俺を待っていた。嬉しそうに笑顔で手を振る彼女の向かいの椅子を引き、
「待たせてごめんね」
と言うと、
「石田さんに早く会いたくて、私が早く来すぎちゃったんです」
麻友奈ちゃんは少し俯き、顔を赤らめて呟いた。
控えめに言って天使だな。
俺は夢見心地で、自分の彼女に見惚れた。
田舎から出てきて2年。麻友奈ちゃんは、職場と家を往復するだけだった俺の前に舞い降りた天使だ。
清楚な黒髪とつぶらな瞳。男性に免疫がないという彼女は、先月の初デートのとき、手を繋いで街を歩いただけで恥ずかしそうに顔を伏せていた。東京の女は怖いぞぉなんて、知りもしないで脅かしてきた故郷の奴らに見せてやりたい。
今日の待ち合わせは、オープンテラスが人気のカフェにした。晴れた初夏、つばの広い帽子をかぶり、レモン色のテラス席でロイヤルミルクティーを飲む麻友奈ちゃんの姿は、映画のワンシーンのようだ。
「眼鏡、初めて見るよ。普段はコンタクトなの?」
「ううん、実はこれ、色のついていないサングラスなんです」
両手の人差し指を立てて茶色いフレームを挟んだその仕草も、たまらなく可愛い。
女性に人気のカフェで検索したのだが、強い日差しは彼女の白い肌にはよくなかったのかもしれない。やっぱり中の席にしてもらおうかと提案すると、彼女は首を振り、
「せっかくいいお天気だから」
と笑った。
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