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にありーいこーる?
一人っ子だった俺はずっと弟がほしいと言っていた。
それが無理だと理解したのはいつだっただろう。
いつも笑顔で明るい母親。
母は未婚で、俺には産まれたときから父親はいなかったけれど、それが気にならないくらい楽しい毎日だった。
幼い頃に、一度だけ僕のおとうさんは? と聞いたことはある。だけどそこにそれほどこだわった覚えもない。
未婚の理由についても、気になった時期はあったものの、いつしか興味がなくなっていた。だって俺は、母と二人で本当に幸せだったら。その二人三脚の人生に特に不満はなかったのだ。
やがて、いつしか弟が欲しいだなんて思っていたことも忘れ、迎えた30の誕生日――俺に特別な相手がいないならと、母が希望するままに開かれることになった実家での誕生会の日。
数年前に実家を出たわりに、ちょくちょく帰っているから久しぶりといった感覚はかったけれど、仕事先から直帰したそこに、母以外の誰かがいるのはかなり久々だった。
しかも、その相手はご近所さんでも親戚でもない、見たこともない男……。
男?
年齢は多く見積もって20くらいだろうか。
下手をしたら高校生くらいにも見える。
……誰だ?
彼は母と一緒にキッチンに立っており、ひとまず「ただいま……」と口にした俺に、弾けるような笑顔を向けた。
「初めまして!」
「おとうさんよ」
続けてた振り返った母親が、少女のように頬を染めながら重ねてくる。
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