ラスピラズリが降る夜に

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***  僕は足に魔法をかけ、空を浮いて町の門に向かった。  夜空からは無数の焔を纏った隕石が零れ落ちる涙の様に、次々と降り落ちる。  落ちた瞬間、爆音が響き、鼓膜が振動と共に恐怖心を揺らす。  灼熱に燃える焔が意識を持ったかの様に木造の家々を包んでいく。 ーーーなんで、こんな、戦争なんか。  息も絶え絶えになりながら、僕は町の外を目指した。足は浮いてるはずなのに、心臓の鼓動は速度を速め、喉が焼ける様に熱い。  周りは火の海で、眠る前の穏やかなミラッドの町並みは、幻だったのかと思う程だ。試しに魔法で落ちる隕石を制止させようと試みたが、ものの一秒程度の時間しか稼げなかった。  町の入り口に着いた瞬間、一際大きな、爆発音が全身を揺らした。爆音は鼓膜を破壊する振動を伝えた。  息を呑み、振り返る。 「う、うそ……」 僕が通ってきた道を含め、ミラッドは無数の赤い隕石に押し潰され、跡形も無くなっていた。
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