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町は一夜にして一変してしまった。自分が何処に向かって歩いてるのか分からない。足の魔法も背負っていたリュックにかけていた魔法も解けてしまったからか、体も気持ちも重い。当てもなく彷徨う亡霊の様に歩いていると、町明かりが見えた。
銀色の髪をした同胞達がミラッドの町を背に、絶望を乗せ、歩いているのが分かった。隕石は近隣の町にも降り注いでいたが、被害が一番大きかったのはミラッドだった。
町は影も形もなく、一晩明けると、大きな岩がただ不規則に並ぶ荒野と化していた。
あの時、僕がガノ爺を迎えに行っていれば、母は死なずに済んだのかもしれない。そう思うと、涙が溢れた。道の至る所で、ラスピ族が落としたサファイヤブルーに輝くラピスラズリの宝石が落ちていた。
「俺たちの町が一番に狙われたのは、ハイノ星がラスピ族の魔力を怖れたから、らしいぞ」
「ひどい話…。私達はただ静かに鉱山や湖で採掘していただけなのに」
「記憶を奪うという行為がよほど人間や他の魔族には恐ろしいらしいな」
「同胞を生き返らせる魔法を使うにも、体の一部分がないと使えない……」
僕の日常は、まだ起きてもいない予想から生まれる恐怖に奪われてしまったのか。
ここで涙を落とせば、人間達にとって価値のある宝石を生み出す事になってしまう。
僕は涙を堪えて、遠くに見える町あかりを頼りに、ただ前に進んだ。
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