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DATE/和馬としおん
彼と一緒に地下鉄に乗る機会はとても少ない。
すし詰めの車内で押しつぶされそうになりながら、それでもしおんを壁際においてガードしてくれている和馬の顔を見上げる。
「すごい人だね。思った以上」
「ほんとだな。俺もちょっと甘く見てたわ」
年に一度、港で開かれる祭り。
和馬もしおんもそこへ出かけたことがなかった。たまたま喫茶店で目を通した雑誌にそれが掲載されていたのを見て、しおんから誘ってみた。
祝日の開催なので、ちょうどサンダー&ライトニングは休日だ。花火も打ち上げられるらしい。
付き合いだしてから、結婚した今も案外デートらしいデートは殆どしていない。たまには良いだろうと思って提案してみると、和馬はすぐに同意してくれた。
自宅からは、地下鉄に乗って乗り換えはなし。さほど遠くないから、と油断していた。
「花火のスタート間に合うかな…」
和馬が時計を見る。しおんが覗き込むと、時計を見せてくれる。既に19時だ。
「間に合わなくても、8時半まで上がるから見れるでしょ?」
「そうか。なら大丈夫だな?」
「うん」
地下鉄が終点の駅に滑り込む。一斉にホームに溢れ出す人の波。
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